G550 (N679MS) ETE・燃料モデル 較正まとめ

N679MS(G550) の飛行時間・燃料モデルを実測較正する。①〜④=FR24実測によるETE較正(JA502Aの扱いの検証を含む)、⑤〜⑨=AOM性能表からの燃料諸元と master 投入案。2026-08-10 〜 08-11。

収集 aircraft=GLF5 & routes=JP-JP 有効 254便 / 41機 ETE 推奨 = 刈り込み(JA502A込み・ロバスト) cruise_kmh 901 = AOM の KTAS 487.5kt と一致 季節α型式別化 PR #883 マージ済 飛行時間マトリクス 出力済 master 投入 SQL は未適用(レビュー待ち)

結論(先に)

901 km/h
cruise_kmh — 刈り込みでも除外でも完全に一致
985 km/h
刈り込み無しで含めると過大に引っ張られる
50便
刈り込みが落とした便(うち JA502A 41 / 他機 9)

JA502Aは「除外」ではなく「含めて刈り込む」のが良い。 ミッション便は残差が100分以上の明確な外れ値として現れ、ロバスト刈り込みが自動で落とす。 結果として cruise_kmh は除外した場合と1km/h差もなく一致し、一方でサンプルが 96→254 に増えて 季節αの精度が大幅に上がる(秋 n=8→49、夏 n=18→51)。除外はミッション便を消す代わりに、正常な115便まで一緒に捨てている。

注意:刈り込みは JA502A 専用の処理ではない。他機でも N319ST の RJCC→RJGG(976km を395分)など9便が同じ基準で落ちている。判定はあくまで「モデルからの残差」であって機番ではない。

データの素性

Flightradar24 公式API flight-summary/light。フィルタは aircraft=GLF5(G550/G-Vを区別せず)×routes=JP-JP(発着とも日本=国内完結)。 収集期間は 2024-08-11 〜 2026-08-10。3年遡ろうとしたがサブスクの提供範囲が直近2年までで弾かれたため、上限いっぱいの2年。

区分件数内容
API返却6662年・14日刻み・52リクエスト
除外:発着ICAO/時刻の欠落233reg も経路も持たない断片。どの用途にも使えない
除外:同一空港173訓練・慣熟・哨戒の出戻り
除外:空港座標なし6route-map の airports.json に無いICAO
有効レグ254うち JA502A 158(62%) / その他40機 96

モデル式は C510・CJ4 と同一の Model F。ETE = 大圏距離 ÷ cruise_kmh × 60 + base + 羽田/成田加算 + α(季節)×東西成分km÷100。 ロバスト刈り込みは「残差が中央値の3倍、または15分の大きい方」を超える便を落とし、再推定を4回繰り返す。3ケースとも手順は同一で、入力集合と刈り込みの有無だけが違う。

① 何が起きているか — 距離 vs 実績飛行時間

有効254便すべて。塗りつぶしが刈り込みを通った便、白抜きが落ちた便。JA502Aの白抜き点が上方に大きく外れており、これがミッション便。 破線が「含める(刈り込みなし)」の回帰線で、外れ値に引っ張られて全体が上に持ち上がっているのが分かる。

JA502A(海保) その他40機 刈り込みで落ちた便 含める 刈り込み/除外(ほぼ重なる)
横軸=大圏距離(km)、縦軸=実績飛行時間(分)。回帰線は季節α・首都圏加算を0とした基準線。点にカーソルを合わせると便名が出る。

刈り込みが落とした便(残差の大きい順・上位8)

機番区間距離実績残差解釈

② 3ケースの較正結果

ケース入力→採用cruise_kmhbase羽田/成田MAE(共通評価82便)
含める 刈り込みなし254 → 25498536.2分+9.3分14.14分
刈り込み JA502A込み・ロバスト254 → 20490122.5分+5.1分4.75分
除外 JA502Aを外す・ロバスト96 → 8290121.9分+4.5分4.60分

共通評価82便=JA502A以外の96便のうち、刈り込み・除外どちらのモデルでも外れ値と判定されなかった便。3ケースを同じ物差しで比べるための評価集合で、どのケースの学習にも偏らない。 「含める」の MAE が3倍に悪化しているのは、ミッション便に引きずられて基準線そのものが歪んでいるため。

含める 刈り込み 除外
共通評価82便に対する残差(実績−予測)の分布。負=予測が長すぎ。「含める」だけ中心が左に大きくずれており(=全体に過大予測)、裾も広い。

③ 刈り込みと除外の実質的な差 — 季節α

cruise_kmh は両者一致し、base も0.6分差。実際に効いてくる差は季節αの決まり方にある。 除外すると秋が n=8、夏が n=18 まで痩せ、誤差棒(±標準誤差)が大きく開く。刈り込みなら 秋49・夏51 まで確保できる。

含める 刈り込み 除外 縦棒=±標準誤差
α=東西成分100kmあたりの補正分。負=東向きが速い(偏西風の追い風)。
季節含める刈り込み除外サンプル数 刈込 / 除外
夏のαが正(刈り込み +0.80±0.25、除外 +1.31±0.59)。C510(+0.05)・CJ4(−0.19)とは逆符号で、 「夏は東向きが遅くなる」を意味する。FL430〜450を飛ぶG550が夏季の上層東風を受けている、という説明は成り立つが裏は取れていない。 どちらのケースでも符号は一致しているので、JA502Aの扱いに起因するものではない。

④ 実務でどれだけ違うか — 代表路線の予測ETE

3ケースのモデルで代表路線の空中ETEを計算した(分)。刈り込みと除外の差はおおむね1〜3分で実務上ほぼ無視できる。 一方「含める」は短距離ほど過大で、羽田→新潟で+16分、羽田→伊丹で+16分ずれる。

路線距離含める 冬/夏刈り込み 冬/夏除外 冬/夏刈込−除外

首都圏加算は羽田・成田絡みに適用。往復で値が違うのは風補正(東西成分)が符号を変えるため。
ここの値は較正モデルそのもの(base 22.5 / 首都圏 +5.1)で計算している。⑨⑩ の値は本番 flight-calc の固定分(20分・首都圏30分=C510実測のハードコード)を使うため、首都圏絡みで数分ずれる(例: 羽田→那覇 冬 154分 vs 157分)。

⑤ 燃料側の一次資料 — どのPDFが正か

FR24は燃料を一切返さないため、燃料は時間とは別トラックで性能表から取る(CJ4のときと同じ)。どのPDFを見るかで作業量が大きく変わるので、まず所在を確定させた。

資料判定内容
G550 Operating Manual.pdf
AOM Rev46 / OEM Publications 配下
1,610本命CHAPTER 05 – PERFORMANCE に Climb / Cruise / Descent / Holding / Alternate / Driftdown が全部そろう。CJ4の CPP と同じ構成
G550 Performance Handbook.pdf147部分的AOM第5章の抜粋。巡航・代替は取れるが Holding と en-route Climb/Descent が無い
G550 Pilot Training W&B, Peformance Charts.pdf63不適FlightSafety の訓練ラボ用ハンドアウト。全頁がチャート画像でテキスト層は定型注意書きのみ。内容も上記の抜粋
抽出方法の使い分け:数値表は PyMuPDF の座標再構成でテキストから直接取れる(巡航表・代替表)。 一方 Flight Planning Charts(PH p115-121 / AOM p1148-)はノモグラフで、距離+風→時間→トリップ燃料を作図で読む形式のため数値化できない。 Holding 表はベクター描画でテキスト層に乗らないため画像化して読み取り、AOM本文の計算例と突き合わせて検証した。
所在OneDrive\MCJ運航共有用\(参考資料)MCJ運航共有用\G550\FlightSafety\1 Client Resources\OEM Publications\ 抽出物Desktop\G550飛行時間表\ … G550_巡航燃費_M085_ISA.csv / G550_待機燃費_ISA.csv

⑥ 巡航燃費 — 時間モデルと同じレジームで一致した

AOM p1192 / PH p113「Twin Engine Cruise: MT=0.85, ISA」。FFは2発合計 lb/h。 この表の KTAS は FL370〜510 で一律 487.5kt = 902.8 km/h で、FR24実測から回帰した cruise_kmh = 9010.2%で一致した。 収集した母集団は実運用でM0.85相当を飛んでおり、時間モデルと燃料表が同じ巡航レジームに乗っていることになる。

機体重量(×1000 lb)軽 ← → 重 採用値
横軸=巡航高度、縦軸=FF。高いほど、また軽いほど燃費が良い。赤丸が採用値 FL450 / GW65,000lb = 2,853 lb/h。
ALTGW80kGW75kGW70kGW65kGW60kGW55kGW50k

なぜ FL450 / GW65,000lb を採ったか — CJ4で burn_cruise=1200(FL410高高度巡航)を採ったのと同じ理屈。 この値が効くのはテクラン要否=レンジ判定で、判定が効くのは長距離レグ=高高度巡航の領域。短距離のclimb込み実効値を入れるとテクランを過剰に要求してしまう。 GW65,000lb は長距離レグの巡航中間重量にあたる。ISA偏差はp107注記で ±10℃ごとに FF ∓3.4%

⑦ 待機燃費 — 規程の1,500ftが表に無い

AOM p1217「Twin Engine Holding: ISA」。運航規程の待機条件は1,500ft・30分だが、 表には1,500ftの行が無いため 0ft と 5,000ft からの内挿になる。CJ4では CPP の HOLDING表 14,000lb/1500ft が規程の値と完全一致していたので、根拠の性質が違う点に注意。

機体重量(×1000 lb)軽 ← → 重
待機は低高度ほど燃費が悪い。破線が運航規程の待機高度1,500ft。この高度の行が表に無いため内挿している。
GW(×1000 lb)0 ft5,000 ft→ 1,500 ft(内挿)

検証: AOM本文の計算例「GW 65,000lb / 20,000ft → FF 1,968 lb/hr・174 KCAS」が表と一致することを確認済み。温度補正は ISA±10℃ごとに FF ∓1%。

⑧ 代替飛行計画 と 機体諸元

代替(AOM p1160 / PH p124-125)

条件は無風・ZFW 50,000lb・1,500lbリザーブ込み・Max Range Cruise Mach・FLは最小巡航5分ベースburn_alt / alt_kmhリザーブ1,500lbを差し引いた区間分から出す。国内の代替は近距離が多いので、保守側になる100nm行に合わせた。

距離FL所要CAS燃料(表)区間のみ(−1500)速度燃費

機体諸元(AOM p177-178・OEM型式一般値)

項目備考
Maximum Ramp Weight91,400 lb
Maximum Takeoff Weight91,000 lbaircraft.max_takeoff_weight
Maximum Zero Fuel Weight54,500 lb
Basic Operating Weight (Empty)48,300 lbaircraft.bow要注意 OEM一般値でN679MS実機の計量記録ではない
Maximum Payload6,200 lbBOW 48,300lb のとき
Maximum Landing Weight75,300 lbaircraft.max_landing_weight
Maximum Fuel Capacity41,700 lb
Maximum Usable Fuel Capacity41,300 lbaircraft_types.max_fuel_lb
PowerplantBR700-710C4-11 ×2離陸推力 15,385 lb
BOW 48,300lb は OEM の型式一般値で、N679MS実機の計量記録ではない。搭載可能ペイロードと燃料に直結する値なので、実機のW&B記録が入手でき次第の置換が前提。 master の aircraft-bew-bow/migrate.sql が「N679MS は値未確定 → NULL のまま(後日投入)」としていた箇所そのもの。

⑨ master 投入案

本番の現状:aircraft の N679MS は type_code='G550' で登録済みだが重量系は全てNULL。aircraft_typesG550行は無い。 SQLは Desktop\G550飛行時間表\G550_master投入案.sql未適用)。

出所 / 根拠
cruise_kmh901FR24 実測。AOMの KTAS 487.5kt と0.2%一致
burn_cruise_lbph2,853AOM Twin Engine Cruise M0.85 ISA / FL450 / GW65,000lb
burn_hold_lbph2,089AOM Holding ISA / GW55,000lb / 1,500ft内挿
burn_alt_lbph2,544AOM 代替100nm行 (2,560−1,500) ÷ 0:25
alt_kmh444AOM 同 185.2km ÷ 0:25
max_fuel_lb41,300AOM Maximum Usable Fuel Capacity
seats10仮置き 実キャビン仕様の確認待ち
min_rwy_m1,800仮置き C510=1,200 / C25C=1,500
ex_ok / ex_may / ex_tech1,400 / 1,200 / 1,400仮置き ※tech=ok のため、テクラン経由の各区間に直行OKと同じ基準がかかる(C510・CJ4は tech<ok)
default_taxi_fuel400仮置き C510=85 / C25C=250
TYPE_ORDER には G550 を追加しない。これを触らない限り N679MS は「事業機外」の扱い(オーナーFLTの社内登録のみ・代理店ポータル/空きカレンダー/料金計算に出ない)が維持される。諸元だけ入れても事業機化はされない。

実経路での検証(assessItinerary() に投入案の値を通した結果・PR #883 マージ後)

路線距離ETE冬ETE夏区間燃料代替待機F_Extra判定

全路線 direct_ok。F_Extra が29,000〜36,000lb残るので、国内では ex_* 閾値は実質効かない(G550の航続に対して国内レグが短すぎる)。仮置き値が効いてくるとしたら将来の国際線。
なお min_rwy_m=1800 だと master の154空港のうち40空港が運航不可になる(丘珠・八尾・屋久島・但馬・佐渡・福井 ほか)。

⑩ 空港間 飛行時間マトリクス

PR #883 のマージ後に生成(型式別αが効いた状態)。CJ4と同じ86空港・同じ形式で出力したので直接比較できる。 出力先は Desktop\G550飛行時間表\、値は空中ETE(taxi除外・BO-BIではない)。 生成は本番と同一の flight-calc.js を Node から require して ete() を全順序ペア×4季で回す方式(7,310ペア)。

19.2分
CJ4に対する平均短縮(4季平均・7,310ペア)
71分
最大短縮 中標津→香港(3,702km)
0件
G550の方が遅いペア
路線距離4季平均CJ4比
羽田→新千歳820km1:211:261:24−12分
羽田→関西433km1:070:551:01−9分
羽田→福岡881km1:461:221:33−18分
福岡→羽田881km1:121:361:24−10分
羽田→那覇1555km2:372:042:20−29分
羽田→石垣1939km3:092:272:47−37分
羽田→台北桃園2122km3:272:373:01−41分
羽田→香港2902km4:333:233:57−56分
羽田→グアム2505km3:073:213:14−37分
海外は外挿:αは国内便のFR24実測回帰なので、台湾・韓国・香港・マリアナは外挿値。 東西成分が大きい香港は 羽田→香港で冬 4:33 / 夏 3:23 と70分規模の開きになる。国内と同じ確度では読めない。
また固定分(20分・首都圏30分)はC510実測のハードコードで G550 未per-type化のため、首都圏絡みは約2.4分 長め(保守側)に出る。 伊丹は airport_alertsblocks_quote で対象外のため86空港に含まない(CJ4表と同じ)。

推奨と次の一手

採用案 — 刈り込み(JA502A込み・ロバスト)

cruise_kmh = 901 base = 22.5 分 (羽田・成田絡みは +5.1 分) α = 冬 -1.99 / 春 -0.28 / 夏 +0.80 / 秋 -0.71 MAE 4.75 分(共通評価82便) / n = 254 → 204

ミッション便は残差で機械的に落ちるため、機番で切る必要がない。除外案と比べて cruise は同値、base は0.6分差、 その代わり季節αのサンプルが3倍近くになる。

残る弱点(採用しても消えないもの)

項目状況対処
春のサンプル刈り込みでも n=28 と薄い(他季は49〜76)当面は許容 収集期間は2年が上限のため増やせない
夏αの符号+0.80 と正。上層東風で説明はつくが未検証保留 実運航が始まってから検算
正データとの突合自社機でないため社内Journey Logに相当する正が無い(C510では平均1.8分一致を確認できた)不可 N679MSはFR24に記録ゼロ
G-Vとの混在ICAO型式コード GLF5 はG550とG-Vを区別しない許容 分母確保を優先(ユーザー判断済)

次の一手

  1. 季節αの型式別化PR #883 マージ済 flight-calc の ALPHA_BY_TYPE に G550 を登録。未登録のあいだ C510 の α にフォールバックしており、夏に最大9分ずれていた(羽田→那覇 133分→124分)。companyapps/sales/reservation の3コピーに同一改修。C510・C25C は全ケース変化なしを実経路で確認済み
  2. master への投入レビュー待ち 仮置き4項目(seats/min_rwy_m/ex_*/taxi)の確認後にPR化。D1は --remote 必須・ワーカー再デプロイ不要
  3. 飛行時間マトリクスCSV完了 ⑩のとおり86空港×4季+明細+CJ4比較を出力
  4. 距離連動ブロック燃料(任意)— AOM第5章に en-route の Climb (p1174) / Descent (p1211) 表があるので、CJ4の blockFuelC25C と同じ「climb+cruise+descent 積算」モデルが G550 でも組める。単一燃費×ETEで足りなければ着手

生データ・スクリプト: C:\Users\fligh\Desktop\G550飛行時間表\g550-flights.csv / _src\